下痢とは

下痢とは、水分量が異常に多くなった軟便または水の様な便が1日に3回以上出る場合を指します。私たち人類は食事から得られる栄養素を体に取り込むために、大量の水分を必要とします。口の中で分泌される唾液や胃では胃液、小腸では腸液、そのほかにも胆汁や膵液といった消化酵素を含んだ消化液は1日あたり約9Lにもなると言われています。この消化液に溶け込んだ栄養素は、主に小腸で吸収されています。
小腸を通り抜けて大腸(盲腸に)進んだ時点では、まだほとんど液体状の便です。大腸はおおよそお腹を一周するように配置されており、この中を進むうちに大切な水分やミネラルが血液の中に吸収されることで固形の便が作られます。この過程になにかしらの問題が起こることで、水分が多く残ってしまった便が下痢便となります。1~2週間で治まる下痢を急性下痢、4週間以上続くものは慢性下痢と分類されています。
原因
下痢には非常に多くの原因があります。
消化吸収不良
食べ過ぎや冷えなどにより小腸がうまく働けず、栄養を十分に吸収できない場合、消化不良となった腸液が大腸に流れ込むと水分を吸収しきれず下痢を引き起こすことがあります。最も多い急性下痢症の原因で、症状は一過性です。
その他にも腸に関する基礎疾患(クローン病、カルチノイド症候群、アミロイドーシスなど)や小腸の手術などによって、栄養が十分に吸収されない場合は同様の理由で慢性的な下痢を引き起こします。また、一部の食物に対して消化・吸収が困難(乳糖不耐症など)な場合もあります。
細菌やウイルス感染
代表的な細菌は病原性大腸菌や腸炎ビブリオ、カンピロバクターやサルモネラ菌等で、暑い夏に繁殖しやすく、食中毒の原因となります。これと逆にウイルス性の腸炎は寒い冬に流行する傾向があり、主なものにノロウイルスやロタウイルス感染があります。そのほかに頻度は少ないものの赤痢アメーバ、クリプトスポリジウムなどの寄生虫感染が原因となることもあります。
過敏性腸症候群(IBS)下痢型
過敏性腸症候群の明確な原因は不明ですが、ストレスや自律神経の乱れ、腸内環境の変化などが影響していると考えられており、内視鏡検査等では異常がみられません。慢性的な下痢の原因となりますが、食習慣や生活習慣からのアプローチで改善することがあります。
薬剤性の下痢
抗生物質や抗がん剤(化学療法)、免疫抑制剤などを開始した後に、腸内フローラの乱れや腸の粘膜障害が起こることで下痢を発症することがあります。特に抗がん剤では高度な下痢と食欲不振によって水分摂取もままならなくなり、入院での治療が必要となることがあるので注意が必要です。
検査
症状に応じて、必要な場合に便の検査を行います。長期間続く下痢については基礎に慢性的な腸の病気が存在する可能性があるため、大腸カメラ検査が行われます。大腸カメラ検査で異常がみられた際は、組織を採取して病理検査を行うことで診断します。
治療
原因により治療の方法が大きく異なります。ウイルスや細菌による感染が原因の場合は毒素や原因微生物の排出を促すために、下痢止めはなるべく使用せずに腸の安静を保ちます。この際、脱水予防のために水分は積極的に摂取していただくことが大切です。
原因が細菌の場合には抗生剤による治療が行われることもあります。薬剤性の下痢の場合は原因となった薬剤を中止(または変更)して、効果がなくなれば改善されます。ただし改善までに数日を要する場合は対症療法として下痢止めの使用が有効となります。
過敏性腸症候群(IBS)の場合はストレス因子の除去や生活習慣の改善、食習慣の改善が重要となります。お薬を用いた治療も有効となることがあります。炎症性腸疾患等の慢性疾患が原因となっている場合は専門的な治療が必要となるため、適切な医療施設をご紹介させていただきます。