肛門が痛くなる原因

「肛門が痛い」という症状は、日常生活に大きな影響を与えるだけでなく、消化器系の健康状態を示す重要なサインでもあります。痛みの原因は多岐にわたり、腫れや炎症を伴うもの、そうでないものがあります。ここでは主な原因とその特徴について詳しく解説します。
腫れが伴う痛み
肛門が腫れて痛む場合、以下のような原因が考えられます:
いぼ痔
いぼ痔とは、肛門の周辺にできるしこりのことで、正式には「内痔核・外痔核」と呼ばれます。日本人の21.6%から55%が罹患するとされています。
いぼ痔ができる原因として挙げられるのは下痢や便秘、妊娠や出産、長時間の立ち仕事など。出血に気づいていてもそれほど痛みが強くないケースや、痛みがあっても恥ずかしくて受診をためらってしまうケースが多く、症状が進行してしまうという問題があります。
肛門の内側の粘膜部分にできたものを「内痔核」、肛門の外側の皮膚部分にできたものを「外痔核」と呼びます。粘膜と皮膚の境目は「歯状線」といい、歯状線のどちら側にあるかで名称が変わるのです。
「いぼ痔」で病院へ行くのはハードルが高いと思われるかもしれませんが、重症化すると手術・入院が必要になるため早期改善が望ましいです。
肛門周囲膿瘍
肛門周囲に細菌感染が起こり、膿がたまる状態です。
強い腫れと鋭い痛みを伴います。
発熱を伴うことがあり、放置すると膿が皮膚表面に破れることもあります。
肛門周囲の皮膚疾患
皮膚の炎症(接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎)が肛門周囲に及ぶと、腫れやかゆみとともに痛みを引き起こすことがあります。
直腸脱
直腸の一部が肛門から脱出する状態で、腫れと共に痛みが現れることがあります。排便時に強くなるのが特徴です。特に高齢の女性に多く見られますが、若い方や男性にも起こり得る症状です。
直腸脱は、加齢や出産に伴う骨盤底・肛門括約筋の緩み、直腸の固定の低さ、排便時にいきむ習慣などを原因として発症します。
そのため、特に高齢の女性によく見られます。
腫れを伴わない痛み
肛門が痛いのに目立った腫れがないという症状の場合、以下の原因が考えられます:
裂肛(切れ痔)
排便時に肛門の皮膚が裂けて痛みを生じます。
鋭い痛みが特徴的で、特に排便時に強く感じます。
痛みに加えて少量の出血が見られることがあります。
肛門周囲の神経痛
肛門周囲の神経が過敏になり、痛みを引き起こします。このケースの場合、座ると痛みが増す場合があります。
肛門括約筋の痙攣
肛門を締める筋肉が痙攣を起こすことで、断続的な痛みが発生します。
夜間に起こることが多く、一定時間で自然に消失します。
直腸がんや肛門がん
早期の段階では痛みが軽微ですが、進行すると肛門周囲や直腸に痛みを感じることがあります。血便や排便習慣の変化も併発する場合があります。
肛門鏡検査の早期受診を

当院では肛門鏡検査で肛門の状態や、それに至っている原因を調べることができます。
肛門鏡検査は、短い筒状の器具である肛門鏡を用いて、肛門や直腸の内部を直接観察する検査です。上記で挙げた痔核や裂肛、直腸脱、肛門がんといった疾患を発見することが可能です。
「恥ずかしいから」と中々検査に躊躇される方も多いですが、当院ではプライバシーをしっかり守り、患者様がリラックスして検査を受けられる環境づくりに努めています。
検査を受けてその改善方法を提案することは勿論、生活上の注意点なども具体的にお伝えします。また、追加検査が必要な場合には、適切なご案内をいたします。